同じ鍼灸なのに、日本と中国では使う鍼も施術方法も違うことを知っていますか?
日本医専では日本鍼灸・中国鍼灸、この2つの鍼灸をしっかり学ぶカリキュラムをご用意しています。
それでは、この2つの鍼灸を学ぶのはなぜなのでしょうか?

働き方の多様化や高齢化、ストレス社会、美容意識の高まりなどにより、
従来の痛みの治療だけでなく、幅広い分野で求められている鍼灸師。
こうした時代のニーズに応えるため、
日本医専が育成するのは、社会の変化や多様な要望に柔軟に対応できる鍼灸師です。

そのため本校では、日本鍼灸と中国鍼灸の双方を体系的に学べるカリキュラムを用意し、
幅広い知識と技術を身につけられる教育を行っています。
同じ「鍼灸」でも受け継がれてきた考え方や、施術の技術・効果には違いがあります。
それぞれの特徴を知り、技術を学ぶことは鍼灸師としての視野を広げるのはもちろん、
様々な手技を身につけるための土台になると考えているからです。

今回は前後編に分けて、日本鍼灸と中国鍼灸の違い、そして両方を学ぶ理由を
鍼灸学科 学科長 中村 幹佑先生に教えてもらいます。

中村 幹佑 (なかむら かんすけ)先生

学校法人 敬心学園 日本医専 鍼灸学科 学科長/事業推進部マネージャー
「4大鍼灸(スポーツ・美容・婦人・高齢者)」の第一線で活躍しつつ、
学科長として鍼灸学科の運営・管理を担っている。
実践的かつ丁寧な実技指導で、学生一人一人の成長を支えている。
順天堂大学などとのメンタルヘルスに関する共同研究や、「日刊ゲンダイ」でのコラム連載など、
学校の枠を超えて鍼灸の魅力を社会へ積極的に発信も行う。
豊富な知識と経験を備えた、本校を代表する教員の一人。

①日本鍼灸・中国鍼灸について

上から中国鍼灸で使用する「中国鍼」、下が日本鍼灸で使う「和鍼」

日本鍼灸

髪の毛よりも細い鍼(和鍼)と、「鍼管(しんかん)」という道具を使用。
鍼管を使うことで痛みを抑え、優しく刺すことができるのが特徴です。
6世紀に中国から伝来した伝統医学(鍼灸)を、日本独自に発展させた治療法です。

中国鍼灸

太さのある鍼(太さ0.25mm〜0.38mm以上)を使用。(中国鍼)
施術者が手首のスナップや指先の技術で、直接肌に刺入するのが伝統的なスタイル。
鍼の持ち手(鍼柄:しんぺい)が、和鍼に比べて長く作られているのが特徴です。
鍼を刺しながら、または刺した後、鍼を左右に回すことも。
紀元前に尖った石から始まり、最古の医学書『黄帝内経』によって体系化されたといわれています。

②2つの手技の違い
4つの項目から、「日本鍼灸」、「中国鍼灸」それぞれの違いについて解説します。

刺激

<日本鍼灸>
・鍼は浅めに刺す
・軽微な刺激
・鍼管があることで、刺したときの痛みは少ない
・刺した後は、そのままなにもしない

 

<中国鍼灸>
・鍼は深く刺す
・痛みに直接響かせるような、強い刺激
・鍼を刺しながら、または刺した後、鍼を左右に回す場合も

 

 

<日本医専での学び方>
1年次では、日本鍼灸・中国鍼灸の両方について基礎からしっかりと学び、
鍼灸師として必要な土台を築きます。
2年次以降は、日本鍼灸と中国鍼灸それぞれの理論や治療法を専門的に学ぶ授業を設けており、
より実践的な知識と技術を身に着けていきます。

中村先生:1年次には疑似皮膚を使って鍼を刺す姿勢や力加減など、徹底的に体に叩き込みます。
そもそも鍼の刺し方が下手だと、鍼灸師として施術するのは難しいですからね。
どの業界でも基礎は大事だと思いますが、例に漏れず鍼灸師も1年次の授業が最も大切だと言っても過言ではないのです。

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両方学ぶと……
患者さん一人一人の体質やその日の体調、症状に合わせて
施術方法を幅広く考えられる力を養い、手技の選択肢を増やせます

診断

<日本鍼灸>
日本鍼灸では、「脈診」や「腹診」、「ツボの反応」など、触診を重視しています。
これは、日本の鍼灸が中国から伝来した後、日本の風土や文化、医療観に合わせて
独自の発展を遂げてきたためだと考えられています。
伝来以降、日本の鍼灸では身体の状態を手や指先の感覚で丁寧に捉えることが重視され、
繊細な触診技術が磨かれてきました。
こうした積み重ねが、日本鍼灸ならではの特徴に繋がっているのです。

【脈診】
手首の脈の打ち方や強弱から、身体全体の気血(エネルギーや血液)の状態や
五臓六腑のバランスを読み取ります。

【腹診】
お腹に軽く触れたり押したりして、皮膚の温度、硬さ、緊張、圧痛(押したときの痛み)などを確認し、
身体の内側の状態や不調の原因を読み取ります。

【ツボの反応】
ツボは、身体の不調が皮膚や筋肉の表面に現れたサイン。
体調を測る「診断点」や、刺激を加える「治療点」として施術を行います。

 

<日本医専での学び方>
座学と実技を組み合わせて段階的に学びます。
1年次には、東洋医学の基礎やツボの場所などを学びます。
座学だけではなく、直接触れて理解する時間を多く設けているのが特徴です。
2年次では、学生同士がペアを組み、実際に施術を行いながら学ぶ実技授業を用意。
様々な症例や病態を想定した実践的なトレーニングを通して、
教科書で学んだ知識への理解を深めるとともに、
臨床現場で求められる技術や対応力を身につけていきます。
中村先生:日本鍼灸の診断は感覚が頼りになるので、「張っている」「かたい」などが上手く感じ取れずに苦戦する学生もいらっしゃいます。
ですが、とにかく多くの体に触れていただき、「これが張っている感覚だよ」「この部分がかたい感触だよ」などと手取り足取り、教員側も指導しています。
そうした繰り返しの学びによって感覚を養っていただき、診断ができるように導きます。
<中国鍼灸>
中国鍼灸では、患者の様子を見る(望診)、音やにおいを確認する(聞診)、
症状を聞く(問診)、身体に触れる(切診)といった、総合判断で診断を行います。
これを「四診合算」といいます。
五感を通して得られた様々な情報を、一定の理論に基づいて分析・統合していくため、
論理的な思考力と幅広い知識が求められます。

【望診/視覚】
顔色、肌ツヤ、体型、姿勢、舌の状態を確認します(舌診)。
中でも舌の状態を確認する舌診は、内臓の健康状態や体質、
病気の進行度を客観的に判断するために極めて重要な診察方法です。
東洋医学では、舌は「内臓(五臓六腑)の鏡」といわれており、
体内の状態がダイレクトに現れる場所と考えられているのです。

 

【聞診/聴覚・嗅覚】
声のトーンや呼吸、咳、においから、異常がないかを読み解きます。

 

【問診/対話】
寒気や熱の出方(往来寒熱や潮熱など)、汗のかき方、頭痛の場所、
飲食、睡眠、便や尿の性質などを患者からヒアリングします。

 

【切診/触診】
「脈診」、「腹診」、ツボの周囲を触る(切経)など、
身体に触ることで異常を読み解きます。

 

<日本医専での学び方>
日本鍼灸の場合と同じく、座学と実技を組み合わせて段階的に学びます。
1年次では知識を固め、2年次には舌の状態を生徒同士で見せ合って状態を確認したり、
問診表のロールプレイングで的確に原因を導き出すための質問の組み立て方を訓練するなど、
どんどん実践に近づいていきます。
3年次になると、学校の附属治療院で実際に診察する「臨床実習」が始まります。
ここで初めて四診合算(全ての情報を統合して一つの診断を下すこと)に挑んでいきます。
中村先生:中国鍼灸の診断で躓くのが、その知識を頭に入れることです。
診断点や治療点となるツボや症状など、覚えることはたくさん。
例えば耳のツボだけでも110以上あり、覚えるのに辟易としている方もいらっしゃいます。
そうした時にリズムで覚えられるよう歌にしてたり、独自に教材を作ったりなど、教員側も様々な工夫を凝らして皆様をサポートしています。
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両方学ぶと……

診断精度の向上に繋がります

 

的確な診断ができることで、根本原因へ効果的なアプローチが可能に。
治療効果の向上、早期改善へ導くことができるのです。

 

-column-
東洋医学の診断は「症候群」

東洋医学の診断は特定の「病名」ではなく、患者の体質や症状全体の状態を総合した
一種の症候群・状態像に基づいて行われます。

 

●「病気」と「症候群」の違い
【病気】:原因やメカニズムが明確で、診断名として成立している状態。
例)急性上気道炎(いわゆる「風邪」)、腰椎椎間板ヘルニア、糖尿病、うつ病など

 

【症候群】:共通して現れやすい症状の「まとまり」。
原因が一つに特定されていない状態。
例)「冷え症で、腰が痛くて、深く眠れなくて」など、特定の診断名がつかない

 

●症候群の診断から施術までの流れ
症状 A B C D Eが揃ったら
=α症候群 : α症候群に効果のあるツボαへ施術
症状 A F G H R ※「症状A」が同じでも他の症状が異なれば
=β症候群 : β症候群に効果のあるツボβへ施術

 

「病院に行っても診断名がつかず、鍼灸治療をしたら効果があった」のは、
この症候群に当てはまったから

この症候群が「α」なのか「β」なのか、判断するためには
A~Rの症状をすべて把握する必要があります。
そして症状を問診で聞いて診断をし、適切な施術を行います。
このことから、幅広い情報をもとに診断を組み立てていくことが、中国鍼灸の特徴なのです。

いかがでしたでしょうか。
2つの鍼灸の違いが、より見えてきたのではないかと思います。
そこで改めて、こうした違いのある2つの鍼灸をなぜ日本医専では両方学ぶのでしょうか?

後編では、残り2項目についての日本鍼灸・中国鍼灸の違いと、
より具体的に学びのイメージに繋がるよう、日本医専での学び方も併せてご紹介させていただきます。
さらに、「日本医専ではどうしてこの2つを両方学ぶのか」というところに
グッと迫っていきたいと思います。

後編は11月13日(金)頃掲載予定です。どうぞお楽しみに!