【川﨑先生コラム】風邪をひきにくい体へ!運動と免疫力
2024/12/26
こんにちは!!
日本医学柔整鍼灸専門学校 広報担当です。
川﨑先生コラムの第61弾をお届けいたします!
風邪をひきにくい体へ!運動と免疫力
インフルエンザが流行している時期ですが、年末年始は健やかに楽しく過ごしたいですね。
一般的なかぜやインフルエンザにかかりやすい人とそうでない人では、免疫力の差に違いがあります。
免疫力は加齢や過剰なストレス、生活習慣などにより低下するとされています。
免疫力は生まれながらに持つ生体防御機能で個人差がありますが、健康的な食生活や適度な運動、規則正しい生活を心がけていれば向上することができます。
しかし、健康意識が高く予防を心がけていても、かぜやインフルエンザにかかってしまいます。
そして意外にも、一般的な人より丈夫な体をしていると思われている、アスリートの方がかぜをひきやすい傾向があります。
かぜをひきやすい人、そうでない人の個人差とはどんなものがあるのでしょうか。
常に元気であり、好きなことを続けられる体づくりをするためのヒントをお伝えしたいと思います。
1.かぜ症候群とインフルエンザの感染経路
かぜやインフルエンザはウイルスによる感染がほとんどで、感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染です。
感染とは、口や鼻、目の粘膜から体内に侵入したウイルスが上気道(鼻腔から咽頭まで)の粘膜に付着し増殖することにより、くしゃみや鼻水、咽頭痛などの上気道症状や、発熱、頭痛など様々な症状が現れます。
2.感染を防ぐ免疫抗体
「抗体」とは、体内に入ってきた病原体などの異物(ウイルスや細菌などの抗原)を排除するために働く、「免疫グロブリン」というタンパク質のことです。
異物が入ってくると抗体が作られ、異物を攻撃し発病を防いでくれます。
免疫グロブリンはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれに働きがあります。
特に、免疫機能に関係するのは、「IgG」と「IgA」です。
「IgG」は血液中に最も多く含まれている免疫グロブリンで、免疫機能の主役となるものです。
「IgA」は2番目に多い免疫グロブリンで、唾液や鼻汁、涙、消化管(腸管)などに粘膜表面に含まれている粘膜免疫です。
IgGとIgAは、病原菌やウイルスに対する感染防御の高い抗体として体を守ってくれています。
3.激しい運動は免疫力を低下させる
運動は、私たちの健康維持に欠かせない要素の一つです。
心肺機能の向上や筋肉の強化だけでなく、免疫力の向上にも大きく貢献することが知られています。
適度な運動は免疫力を高め、感染症の予防に有効とされています。
しかし、激しい運動やトレーニングは骨格筋への血流は増えますが、粘膜、内臓への血流が抑制され、免疫バリア機能が低下します。
その他、交感神経が優位になり、体内をパトロールしながら細菌やウイルスを見つけると強い殺傷能力で攻撃する「NK細胞」(ナチュラルキラー細胞)や異物の情報を伝える役割をしている「ヘルパーT細胞」、そして、ウイルスに感染した細胞や病原体になった細胞を、直接やっつける役割をしている「キラーT細胞」の機能が低下し、免疫細胞の活動が抑制され、免疫力が低下します。
また、唾液に存在するIgAの分泌も減少し、粘膜免疫が低下しかぜをひきやすくなります。
4.免疫力低下の原因
①上気道や口腔の乾燥
気管や気管支の粘膜は多列線毛上皮で被われています。
上気道から気管支に入ったウイルスは、粘膜上皮細胞から分泌される粘液にキャッチされ、線毛運動により排泄され防御機構が働きます。
ただ、線毛は寒さと乾燥に弱いという弱点があり、冬の季節はウイルスが侵入しても排泄する力が弱くなってしまいます。
もう一つは、口腔内の乾燥による粘膜免疫の低下です。
唾液分泌量が多い方が、ウイルスや細菌に感染しにくいといわれ、唾液には粘膜免疫の役割があるため感染防御に働きます。
唾液の分泌はリラックスした状態の副交感神経が優位の時に増加し、激しい運動時には交感神経が優位になるため、唾液の分泌量は低下し、IgA抗体の産生も低下します。
試合シーズン中のアスリートやストレスを抱えている人は、唾液の分泌量が減少するので免疫力が低下しかぜをひきやすくなるということです。
適度な強度で心地よい負荷の運動をしている人は、唾液に存在するIgA抗体の分泌が上昇するため、ウイルスや細菌をブロックする能力が高まります。
◇ 唾液分泌には、耳下腺、顎下腺、舌下線という三大唾液腺があります。
特に、免疫に関しては、口腔や上気道の粘膜を保護するための粘性がある唾液を分泌する、顎下腺や舌下腺が重要となります。
唾液腺のマッサージをすることで唾液分泌が促進できます。
是非、やってみてください。
🌸耳下腺マッサージ
頬に人差し指から小指までの4本の指をそろえて当て、上の奥歯あたりを後ろから前へ円を描くように擦ります。
🌸顎下腺マッサージ
顎の内側の柔らかい部分に指をあて、耳の下から顎の下に向かって指先で押していきます。
🌸舌下腺マッサージ
両手の親指をそろえて、顎の真下から舌を突き上げるようにゆっくりと押し上げる。
各マッサージを10回3セット行いましょう。
マッサージを行うタイミングは、食事前やリラクゼーションの際など、できるタイミングでOKです。
テレビを見ながらでも簡単に行えるので、毎日行うようにしましょう。
②ストレス
自律神経とともに体の機能を調節しているのがホルモンです。
運動はホルモンの分泌にも関係しており、ホルモンを介して免疫にも働きかけます。
高強度の運動は身体を変化させるため、心身ともにストレスになります。
そのストレスに対抗するために、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)というホルモンを分泌して、体は頑張ろうとします。
アスリートの場合、ストレスを感じる合宿や試合シーズン中など、高強度のトレーニングや精神的負担を強いられる時期は、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)やカテコールアミン(副腎から合成・分泌される神経伝達物質)が過剰に分泌され、必要なタイミングで分泌ができなくなます。
結果的にストレスに対抗できなくなり、免疫機能の働きが抑制されて免疫力が低下することに繋がります。
また、筋肉量を低下させる要因にもなります。
コルチゾールの合成にはビタミンCが必要で、ストレスが蓄積するとビタミンCの消費が激しくなるため、いちごやキウイ、ブロッコリー、パプリカ、サツマイモ、ジャガイモなどのビタミンCを多く含む食品を積極的に取ると、免疫機能が強化され抵抗力が高まります。
③女性ホルモン
女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。
エストロゲンは、免疫細胞がウイルスを攻撃するのを活性化する働きがあり、免疫力を上げて女性の体を外敵から守ろうとします。プロゲステロンは免疫システムを抑制する働きがあります。
男性に比べて女性の方が免疫システムは良く働き、免疫力が強い傾向があります。
しかし、排卵期前はエストロゲンが増加して免疫力が高まりますが、月経前後はプロゲステロンが増加し免疫力が低下しやすくなります。
女性は免疫システムが良く働く反面、月経周期によるホルモンバランスが崩れやすいこともあり、免疫力の変動も大きいのが実際です。
女性アスリートで問題となるのは減量や体脂肪の低下です。
過剰な減量やトレーニング、精神的・身体的ストレスは、希発月経(月経の頻度が少ない)や無月経(90日以上月経がない)の原因となり、免疫力の低下だけでなく骨粗鬆症になります。
4.免疫機能を高めて感染を予防するには
①食生活
免疫細胞を活性化させるためにはたんぱく質が必要です。
免疫グロブリンはタンパク質でできているため、肉、魚、卵、乳製品、大豆・大豆製品、発酵食品、乳酸菌などをバランスよく摂取しましょう。
特に、ビタミンA、ビタミンDはIgAが高まる栄養素とされています。
コレステロールも細胞やホルモン、胆汁酸(脂肪の消化吸収)の材料となっているため、脂質を嫌がらずに適度に取り入れるようにしてくださいね。
②基礎体温
免疫力が正常に機能する体温は36.5°とされています。
免疫力を高めるには、基礎体温を上げることで血流が良くなり代謝が促進され、免疫細胞が活性化されます。
病気になった時に発熱するのは、身体が体温を上昇させることで免疫力を活性化させ病気と闘う力を上げようとする反応です。
発熱した際は、無理に薬で熱を下げずに、自然に治癒するのを待つ方が良いとされています。(高熱で生命の危険がある場合は除く)
体温が36℃を切っている低体温の人は、適度な運動と筋力アップで体温を上げることが大切です。
③ウイルスの侵入
感染を防止する方法として根拠があるものは、ワクチン接種(重症化を防ぐ)、手洗い(ウイルスを洗い流す)、マスク(飛沫感染防止)が推奨されます。
風邪のウイルスは20分で粘膜に侵入するといわれています。
ウイルスが手に付着した状態で、鼻や口、眼をこすると感染してしまうので、こまめな手洗いが基本となります。
終わりに
適度な運動は免疫力を高め、健康な体づくりに役立ちますが、個人の体質によってその効果は異なります。
風邪をひきやすい人は、無理のない範囲で運動を行い、免疫力を高め健康な毎日を送りましょう。
また、年末年始は外出も多くなり、寝不足や運動不足、食生活も乱れがちになり、免疫力が低下します。
感染防止に努め、生活リズムを崩さずに過ごし、思い出に残るひと時をお過ごしくださいね。
♡モノローグ♡
今年最後のコラムとなります。拙いコラムをお読みいただき、誠にありがとうございました。
この1年、様々なテーマでお届けさせて頂きましたが、皆様にとって役立つ情報や日々の生活を少し楽しく過ごすことができるヒントとなったでしょうか。
来年も、皆様の生活と心を少しでも豊かにできるような情報を発信してまいります。このコラムを通じて、皆様とつながっていけたら嬉しいです。
新しい年が、皆様にとって健康で幸せな1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。
柔道整復師・鍼灸師
本校柔道整復学科 専任教員 川﨑有子
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2025/07/17コラム
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