こんにちは、日本医専です!
今回は、柔道整復学科の専任教員 川崎先生コラムの第69弾をお届けします!

刺さない鍼で寝違え解消! 川﨑流・電気ていしん療法

「昨日、変な体勢で寝ちゃって」と、朝の不快感に顔をゆがめる方が多くいらっしゃいます。

いわゆる「寝違え」は、睡眠中に不自然な姿勢や寒冷などによって首の筋肉や関節に負担がかかり、炎症を起こしている状態です。

ほとんどの場合、数日で治まりますが、その間の「首が動かせない、回せない」というストレスは想像以上ですよね。

そんな絶望的な「寝違え」を、電気ていしんを使って解消する治療法をご紹介します。

これは、本来は鍼灸師が「鍼」で行う深部の痛み治療を、柔道整復師が「鍼を使わない」方法で実現するアプローチです。

 

そもそも「寝違え」とは?

「寝違え」とは、急な首の痛みに伴い、首(頸椎)や肩甲骨の動きが制限された状態です。

 

【発生の主な原因】

①長時間の不自然な姿勢、②寒冷にさらされる、③疲労の蓄積、④不用意に首を捻ったり、肩甲骨を動かしたなどで起こります。

【症状と痛みの特徴】

主に首を横に倒す動作(側屈)が制限される。

また、僧帽筋、菱形筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋やその周辺に、痛みやしこり(硬結)がみられ、時には、肩甲骨の間にまで痛みが広がる(放散痛)ことがある。

 

【治療と経過】

急性期(痛みが強く熱感があるとき)は、患部を冷やし、軽い手技療法を行います。

急性期が過ぎた後は、手技療法、物理療法(電気・温熱)、そして軽い首と肩甲骨の運動を行います。

 

【予後】

ほとんどの場合、数日から数週間で治りますが、数か月続くこともあります。

長引く場合は、椎間板ヘルニアなど他の病気でないか鑑別が必要です。

 

⚠️ 要注意ポイント

ストレートネックの人は特に寝違えを起こしやすいとされ、スマートフォンの使用時の姿勢には十分な注意が必要です。

 

寝違えの真犯人は、奥深くに潜む「深層筋のコリ」

誰もが経験する「寝違え」。その痛みは、単なる寝相の問題で片付けられるほど単純ではありません。

その多くは、首の奥にある「深層筋」の過緊張や微細な炎症が原因です。

特に、姿勢保持に重要な役割を担う肩甲挙筋や板状筋群といった筋肉群にできるトリガーポイント(T.P.)こそが、痛みの発生源、そして慢性化やぶり返しの真犯人となる頑固なコリなのです。

柔道整復師として患者様の痛みに真摯に向き合う私たちにとって、この表面からは触れにくい深層筋に潜むT.P.へのアプローチは、治療の鍵となります。

 

深部刺激」をめぐる治療技術のジレンマ

深部のT.P.というターゲットに対し、これまで最も効果的な治療法とされてきたのが、鍼を刺して微弱な電流を流す鍼通電療法でした。

この鍼通電療法は、手技では届かない奥の痛みに集中して刺激を加えることができる「深部刺激の優位性」という大きなメリットを持っています。

しかし、ここに一つの治療技術的なジレンマが存在していました。

柔道整復師は鍼を刺入できず、また、患者様の中には「鍼は怖い」「刺されるのは苦手」という方も少なくありません。高い治療効果は認められているものの、この深部へのアプローチがすべての方に提供できるわけではなかったのです。

このジレンマこそが、鍼を使用せずに深部の痛みにどう立ち向かうか?という大きな課題となっていました。

 

電気ていしん療法:非侵襲的なアプローチ法

鍼通電療法の持つ「深部組織への刺激の優位性」を、「非侵襲的(非刺入)」な手法によって実現するために、電気ていしん療法の効果を鍼通電療法と同じような効果を出す方法を考えました。

① ツボ(経穴)への刺激:自律神経への司令

特定のツボ(経穴)に「ていしん」をあて、痛みの局所を直接刺激するだけでなく、自律神経系に働きかけ、筋肉の緊張を緩める指令を中枢(脳)から患部へ送ります。

身体全体のバランスを整えながら、根本的な緊張緩和の準備を整える、東洋医学的なアプローチです。

 

② トリガーポイント(T.P.)への刺激:痛みの元を瞬時鎮静

痛みの真犯人である凝り固まった深層筋のT.P.(トリガーポイント)に、「ていしん」で直接電気を流します。

使用するオームパルサーから発せられる微弱な電気パルスは、その非侵襲的な特性にもかかわらず、筋肉の深部にまで確実に到達し、神経を鎮静させ痛み信号を遮断します。

ツボ(神経系)とT.P.(筋・筋膜系)の両方へ同時に働きかけることが、この治療法の高い即効性と持続的な効果を生み出す秘密です。

効果を出すためには、ターゲットを逃さない独自の「ていしん」の当て方・使い方、痛みの即効性ブロックと持続的な根本緩和を生む電気周波数と通電時間がポイント!となります。

これらの適切な使用により、NRS(疼痛数値評価尺度)の低下とROM(関節可動域)の劇的な改善を促すことができます。

 

その他、柔道整復師の得意とする独自の手技療法を組み合わせることで、さらなる相乗効果が期待できます。最強のコンビネーションアプローチですね。

 

柔道整復師の治療の可能性を拡大

長引く痛みは、患者様の毎日の笑顔をそっと奪ってしまう深刻な問題です。

私はこの現実を心に留め、これからも多くの痛みに寄り添い、「もう無理かな」と感じる治療の限界を、新しい発想で超えていきたいと考えています。

この刺さないのにしっかり届く電気ていしん療法は、単に目の前の痛みを癒すだけでなく、柔道整復術の未来を豊かに広げる大切なアプローチとなるはずです。

私は、この技術と、それを支える体の仕組み(運動器解剖学)、そして臨床で考える力を、柔道整整復師を志す学生たちの学校教育の中で丁寧に伝え導いていきます。

そうすることで、安心で効果の高い技術を身につけ、一人でも多くの患者様が早期に笑顔と希望を取り戻すお手伝いができるよう、力を注いでいきます。

 

柔道整復師・鍼灸師
本校柔道整復学科 専任教員 川﨑有子

 

 

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