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浮谷先生コラム 第14弾~ウキウキ散歩⁉~歯科用語放浪記~

2021/11/19

こんにちは!
日本医学柔整鍼灸専門学校 広報担当です。
浮谷先生コラムの第14弾をお届けいたします!

ウキウキ散歩⁉~歯科用語放浪記~

こんにちは。
だいぶ冷え込んで参りましたが皆様いかがお過ごしですか?
柔道整復学科・教員の浮谷です。
今回は久々に歯科の話です。
と申しましても寄る年波で、新しい情報を提供するよりもついつい昔の思い出を語る機会が増えてしまうことをどうかご容赦ください。

タイトルにあるように特別散歩したわけではなく、たまたまテレビドラマの再放送を観ていたのですが『帝銀事件 を扱ったドキュメンタリー風ドラマで、今年亡くなられた田中邦衛さんが刑事役で出演されていました。

帝銀事件:戦後未解決な怪事件の一つ。昭和23年、帝国銀行椎名町支店(当時)で発生した、何者かによる行員12名の毒殺と現金・小切手が奪われた事件。

ドラマの冒頭、犯人とおぼしき男性が銀行内で次のように発言し行員に予防薬(を飲ませる場面がありました。

「歯の琺瑯質(ほうろうしつ)を痛めるから舌を出して飲むように」

予防薬:事件で使用された薬物は「予防薬」などではなく、青酸カリや青酸ナトリウム、アセトシアノヒドリンといった毒物が疑われた。
いずれも一般の人々の入手は困難であり、旧軍やGHQ、医療関係者まで捜査が及んだ。

ドラマの展開はコラムの内容と異なりますので省きますが、私が気になったのは「琺瑯質」という言葉です。

この歯科用語は現在の「エナメル質」のことで、私の学生時代は「ほうろう質(エナメル質)」表記で教わりました。

帝銀事件は戦後まもなく昭和23年1月に発生したので「ああそうか、この時代はまだ琺瑯質という言葉が使われていたのか」と認識しました。

現在の柔整の解剖学の教科書や国試問題集を見ても歯の表面は「エナメル質」であって「琺瑯質」の文字は見当たりません。

一般の医療や歯科関連本ですら「エナメル質」で表記が統一される傾向にあります。
ここであらためて知識を整理しますと

【ヒトの歯はエナメル質、象牙質およびセメント質の三硬組織と、歯髄という結合組織から出来ています】

それではなぜ「琺瑯質」の表記は消えてしまったのでしょうか?

歯科学生時代、ある教授が言っていました。

「最近は何でもカタカナ用語が増えているが、エナメル質も元は琺瑯質、セメント質は白亜質が正しいのだ」と。

なぜか象牙質だけは現在も残っていてそのまま使用されていますが。

振り返って自身の在学当初は全国に多くの歯科大学や歯学部が誕生し、いわば医師・歯科医の増産時代でした。

その中で母校は日本最古の歯科教育機関であることを誇り、明治時代から歯科用語にも取り組んでいたようです。

帝銀事件の起きた昭和23年頃はまだ歯科大学の数も少なく、それだけ母校の影響力は大きかったと思われますが、やがて全国に国立や私立の歯学部ができて教育内容も少しずつ変化していきました。

歯科用語の変遷は国家試験にも表れ、昔は「琺瑯質」・「白亜質」だけだったものが、⇒「琺瑯質(エナメル質)」・「白亜質(セメント質)」に併記 ⇒「エナメル質(ほうろう質)」・「セメント質(白亜質)」に表記逆転‼ ⇒ 現在は「エナメル質」・「セメント質」のみとなっています。

ほうろう質が用語として文字どおり「放浪」しているのがわかります。

ここで再び教授の話に戻りますが、正論だなと思う部分があるので記しておきます。

「せっかく諸先輩たちが名付けた用語を変えるのはいかがなものか?英語で琺瑯質はenamel、象牙質はdentin、白亜質はcement。だからそれぞれエナメル、デンチン、セメントと記すならわかる。
それをカタカナ用語で「―質」をくっつけて「エナメル質」や「セメント質」などと呼ぶことはもはや専門用語ではない。
それならなぜ象牙質を改めて「デンチン質」としないのか、おかしいではないか‼まるで一貫性がない。諸君、そうは思わないか?」

なるほどなぁと感心しましたが、講義の最後に教授はやや声を落として「時代の流れで仕方ないが、君たちの国家試験はエナメル質やセメント質で出題されても我慢しなさい」と言われました。

当時の母校の授業はこのように気骨ある先生の話が聴けました。

現在はどんな様子でしょうか?母校に限らず国試、国試でどこの歯科大・歯学部も予備校化している噂も聞きます。

自身が言うのもおかしいですが少々寂しい気がします。

(監修/浮谷英邦先生:歯科医師・介護支援専門員)


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