鍼灸師について

鍼灸師が人手不足の理由と対策|採用成功と離職率改善のポイント

鍼灸業界では、多くの治療院が人手不足という課題に直面しています。

求人を出しても応募が集まらない採用難の背景には、厳しい労働条件やキャリアパスへの不安からくる高い離職率が存在します。

この状況を打開するためには、経営者側は採用戦略と職場環境を見直し、求職者側は投要の高い分野を見据えたキャリア設計を行うことが求められます。

この記事では、人手不足の原因を多角的に分析し、その具体的な対策を解説します。

鍼灸師は本当に足りていない?有効求人倍率から見る需給バランス

2021年度の全国ハローワークにおける鍼灸師(はり師・きゅう師を含む)の有効求人倍率は0.83でした。

この数値は、ハローワークに掲載されている求人のみであり、全ての求人を網羅しているわけではない点には留意が必要です。

国家資格を持つ鍼灸師の人数は年々増加傾向にありますが、それを上回るペースで求人数が増加しています。

特に、高齢化に伴う訪問鍼灸の需要拡大や、美容分野でのニーズの高まりが、人手不足感を強める要因です。

資格保有者全員が現場で働いているわけではなく、実際に就業している人の割合を考慮すると、需給バランスは供給不足に傾いているといえます。

鍼灸師が人手不足に陥る3つの根本的な原因

鍼灸師の人手不足は、単に需要が増えているからという理由だけでは説明できません。
その背景には、労働環境やキャリア形成に関する構造的な問題が潜んでいます。

具体的には、「労働条件への不満」「職場の人間関係」「独立開業による離職」という3つの根本的な原因が挙げられます。

これらの要因が複合的に絡み合い、新人や若手の定着を妨げ、経験者の流出を招くトラブルへと発展することで、業界全体の人材不足を深刻化させています。

給与水準や休日などの労働条件に対する不満

鍼灸師の離職理由として最も多く挙げられるのが、労働条件への不満です。
特に新卒や若手は給与水準が低く設定されがちで、一人前の生活を維持するのが難しい場合があります。

また、拘束時間が長く、受付から施術、雑務までこなすため労働時間も長くなる傾向にあります。

忙しい業務内容であるにもかかわらず、それに見合った給与が得られなかったり、休日が少なかったりすることで心身ともに疲弊し、将来への不安から離職を選択するケースが後を絶ちません。

身体を使う仕事でありながら、安定した生活設計が難しい点が大きな課題です。

職場の人間関係からくる精神的な負担

多くの鍼灸院や整骨院は小規模な組織で運営されており、スタッフ間の距離が近いという特徴があります。

この密接な環境は、一度人間関係のトラブルが生じると逃げ場がなくなり、大きな精神的負担につながります。

院長の考え方や治療方針との相違、先輩スタッフとの性格の不一致などが、ストレスの原因となることも少なくありません。

閉鎖的な空間では、個人の感情や意見の対立が業務に直接影響しやすく、職場の雰囲気が悪化すると、仕事へのモチベーションを維持することが困難になり、結果として離職に至るケースが見られます。

独立開業を理由とした経験者の離職

鍼灸師にとって、独立開業は一般的なキャリアパスの一つです。

多くの鍼灸師は、数年間治療院で経験を積み、技術や知識、そして経営ノウハウを学んだ後に、自身の治療院を開くことを目指します。

これは個人の成長としては非常に前向きな理由ですが、雇用している側から見れば、育成した貴重な人材が流出することを意味します。

近年では、フリーランスとして複数の院で業務委託契約を結ぶ働き方も増えており、組織に縛られない柔軟なキャリアを選択する経験者が増えたことも、一つの治療院に人材が定着しにくい要因となっています。

【経営者向け】応募者が集まる求人!採用を成功させる4つのポイント

人手不足が深刻化する中、求人を出して待つだけの受け身の姿勢では、優秀な人材を確保することは困難です。

他院との差別化を図り、求職者に「ここで働きたい」と思わせる魅力的なアプローチが不可欠となります。

そのためには、採用したい人物像の明確化、仕事の魅力が伝わる求人票の作成、SNSなどを活用した積極的な情報発信、そしてリファラル採用の導入といった、戦略的な採用活動を展開することが成功の鍵を握ります。

採用したい人物像を具体的に設定しミスマッチをなくす

採用活動を始める前に、自院が本当に必要としている人材の具体的なイメージを明確にすることが重要です。

どのような技術を持ち、どんな患者層への対応を得意とし、どのような性格の人物がチームにフィットするのかを詳細に定義します。

例えば、「高齢者とのコミュニケーションが得意な、訪問鍼灸の経験者」や「美容鍼灸のスキルを学びたいという意欲のある若手」など、人物像を具体化することで、求人広告に記載する内容や面接での質問が的確になります。

これにより、応募者とのミスマッチが減り、採用後の早期離職を防ぐことにもつながります。

仕事の魅力ややりがいが伝わる求人票を作成する

求人票では、給与や勤務時間といった条件面だけでなく、自院で働くことの魅力ややりがいを具体的に伝えることが不可欠です。

院の治療理念や得意とする症状、患者から寄せられる感謝の声、スタッフが成長できる環境などを盛り込みましょう。

「どのようなスキルが身につくのか」「将来どのようなキャリアを築けるのか」といった、求職者が自身の成長をイメージできるような情報を記載することで、単なる労働条件の比較ではない、価値観や将来性で選ばれる求人になります。

院の独自性や強みをアピールし、他院との差別化を図ることが応募者を引きつけるポイントです。

SNSや自院のウェブサイトを活用して情報発信する

求人サイトへの掲載だけに頼らず、自院のウェブサイトやSNSを積極的に活用して情報発信を行いましょう。

Instagramやブログなどで、院内の雰囲気、スタッフ紹介、勉強会の様子、治療へのこだわりなどを日常的に発信することで、求職者は働く環境を具体的にイメージしやすくなります。

文章だけでは伝わりにくい職場のリアルな姿を見せることで、安心感や親近感を与え、応募への心理的なハードルを下げることができます。

こうした地道な情報発信は、採用活動だけでなく、新たな患者の獲得にもつながる有効なブランディング戦略です。

従業員からの紹介制度(リファラル採用)を導入する

リファラル採用は、既存の従業員に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。

紹介者は院の文化や働き方をよく理解しているため、マッチ度の高い人材を確保しやすいという大きなメリットがあります。

また、求人広告費や紹介手数料がかからず、採用コストを大幅に削減できる点も魅力です。

この制度を機能させるためには、紹介してくれた従業員に対してインセンティブを支払う仕組みを整えることが効果的です。

何よりも、従業員自身が「自分の友人にも勧めたい」と思えるような、働きがいのある職場環境を築くことが大前提となります。

【経営者向け】スタッフの定着率を向上させ離職を防ぐための取り組み

人材の確保と同じくらい重要なのが、採用したスタッフに長く働き続けてもらうための取り組みです。

人手不足の根本的な解決には、離職率を下げ、定着率を高めることが不可欠です。

そのためには、給与や福利厚生といった待遇面の改善はもちろん、スタッフの成長を支援する制度の構築や、将来のキャリアプランを共に考える姿勢が求められます。

安心して働き続けられる環境を整え、スタッフ一人ひとりの働き方を尊重することが、組織全体の安定につながります。

給与体系や福利厚生を見直し安心して働ける環境を整える

スタッフの定着率を向上させるためには、生活の基盤となる給与体系や福利厚生の整備が不可欠です。

経験年数や技術力、業績への貢献度などが正当に評価され、昇給につながる明確な評価制度を構築しましょう。

また、社会保険の完備は当然のこと、交通費支給、家賃補助、退職金制度などを充実させることで、スタッフは経済的な不安なく長期的に働くことができます。

業界の平均水準を調査し、それに見合う、あるいはそれ以上の待遇を提供することが、人材の流出を防ぐための重要な投資となります。

技術や知識の向上をサポートする研修制度を充実させる

向上心のある鍼灸師にとって、自身のスキルアップを支援してくれる環境は非常に魅力的です。

定期的な院内勉強会の開催や、外部セミナー・学会への参加費用を補助する制度を設けることで、スタッフの学習意欲に応えましょう。

最新の治療法や知識を学ぶ機会を提供することは、本人のモチベーション維持だけでなく、治療院全体の技術レベル向上にも直結します。

鍼灸師だけでなく、柔道整復師など他の資格を持つスタッフがいる場合は、合同で研修を行うことで、互いの専門性を高め合う相乗効果も期待できます。

将来のキャリアプランを明確に提示し働く意欲を高める

スタッフがこの職場で働き続けることで、これからどのような未来を描けるのか、具体的なキャリアプランを提示することが重要です。

例えば、分院長や後進の指導役、特定の技術分野のスペシャリストといった役職や役割を示すことで、日々の業務に対する目標意識が生まれます。

今後、スタッフがどのような道に進みたいのかを定期的にヒアリングし、その実現に向けたサポートを行う姿勢を見せることで、働く意欲と組織への帰属意識を高めることができます。

独立を希望するスタッフに対しても、経営に関するアドバイスを行うなど、円満な関係を築くことが望ましいです。

定期的な個別面談でスタッフの悩みや不満を解消する

スタッフが抱える業務上の課題や人間関係の悩み、将来への不安などを早期に把握し、解消するために、定期的な個別面談の機会を設けましょう。

日々の忙しい業務の中では話しにくいことでも、1対1のクローズドな場であれば、本音を打ち明けやすくなります。

面談では、経営者側が一方的に話すのではなく、スタッフの話に真摯に耳を傾ける「傾聴」の姿勢が重要です。

ここで吸い上げた意見や不満を職場環境の改善に活かすことで、スタッフの信頼を得て、離職の芽を未然に摘むことができます。

【求職者・学生向け】人手不足の今だからこそ活躍できる鍼灸師のキャリアプラン

人手不足という状況は、求職者やキャリアアップを目指す鍼灸師にとっては、活躍の場を広げるチャンスでもあります。

多くの治療院が人材を求めている売り手市場だからこそ、自身の専門性やスキルを高く評価してくれる職場を選ぶことが可能です。

今後需要が高まる分野を見極め、専門性を磨くことで、他者と差別化されたキャリアを築き、より良い条件で働く機会を掴むことができます。

戦略的に自身のキャリアを設計することが、将来にわたって必要とされる鍼灸師になるための鍵となります。

今後ますます需要が高まる美容鍼灸や訪問鍼灸の分野

鍼灸師としてのキャリアを考える上で、将来性の高い分野に注目することは非常に重要です。

特に「美容鍼灸」と「訪問鍼灸」は、今後の需要拡大が確実視されています。

美容鍼灸は、健康志向と美意識の高まりを背景に市場が成長しており、専門的な技術を持つ鍼灸師へのニーズは高いです。

一方、訪問鍼灸は、超高齢社会の進展に伴い、通院が困難な高齢者や在宅療養者を支える役割として、その重要性が増しています。

これらの成長分野に特化することで、自身の専門性を高め、市場価値の高い鍼灸師として活躍の場を広げることが可能です。

専門性を高められる医療機関と連携した働き方

活躍の場は、一般的な鍼灸院に限りません。

病院やクリニックといった医療機関で働くことも、専門性を高める有効な選択肢です。

医療機関では、医師や看護師、理学療法士など他職種と連携し、チーム医療の一員として臨床経験を積むことができます。

特に、不妊治療の分野では、体質改善を目的とした鍼灸の役割が注目されており、産婦人科と連携するケースが増えています。

西洋医学的な知識と東洋医学的なアプローチを融合させることで、治療家としての視野が広がり、より複雑な症状に対応できるスキルが身につきます。

鍼灸師の人手不足に関するよくある質問

ここでは、鍼灸師の人手不足に関して、多くの方が抱く疑問について回答します。

資格を持っている人は多いのに、なぜ現場では人手が足りないのですか?

資格を取得しても実際に鍼灸師として就業しない人や、早期に離職する人が多いためです。

給与や休日といった労働条件への不満、結婚や出産などを機に一度現場を離れ、ブランクから復職が難しくなるケースが背景にあります。

その結果、資格者数と実際の就業者数にギャップが生まれ、現場での人手不足につながっています。

特に人手不足が深刻な地域や治療院にはどのような特徴がありますか?

地方都市や過疎地域、そして労働条件が業界水準に比べて劣る治療院で、人手不足はより深刻になる傾向があります。

若手の鍼灸師は都市部に集中しやすいため地方では採用が困難です。

また、給与が低い、社会保険が未加入、休日が少ないといった待遇面の課題を抱える治療院は、求職者から敬遠されがちになります。

未経験から鍼灸師に転職する場合、どのようなスキルを身につけるべきですか?

鍼灸の基礎技術と知識に加え、高いコミュニケーション能力を身につけることが重要です。

まずは専門学校で3年以上学び国家資格を取得することが前提ですが、その後、少なくとも2年は臨床経験を積むことが望ましいです。

アルバイトなどで実務経験を積みながら、患者やスタッフと円滑な関係を築く対話力を磨くことが、活躍するための鍵となります。

まとめ

鍼灸師の需要は増加しており、これに伴い人材確保が課題となっています。

この課題を克服するためには、経営者側が採用手法を見直すとともに、スタッフが長期的に安心して働ける環境を整備し、定着率を高める努力が不可欠です。

一方で、求職者や学生にとっては、需要の増加は自身の専門性を活かして活躍の場を選べる好機でもあります。

美容や訪問、医療連携といった需要の高い分野を見据え、戦略的にキャリアを構築していく視点が求められます。

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